日本に居る分には、日本アマゾンの電子本(Kindle本)を買うのは何の問題もないが、国外に出るとややこしい。5冊程度までは買えるが、それ以上になると買えなくなる。私は何冊かkindle本を出版しているので、アメリカなど海外の友人にも紹介するのだが、購入しようにもできないという相談を頻繁に受けるようになった。
普段電子書籍など読まない人でも、国外に出ると(日本語印刷本が入手困難になるので)、ネットで電子本を買えれば、と思うに違いない。よりにもよって、そういうときに電子書籍購入に制限がかかってしまうというのは非常に残念なことだ。
ウェブ上に、推測を含めながら「こうやればいい」「こうやったらできた」というアドバイスがたくさん載っているが、矛盾する点もあるように思うし、時期により、国によっても異なる節もあり、個人のアカウントによっても違うようだ。私は何の問題もなく買えているので不思議に思い、アマゾンのカスタマーサービスに問い合わせたのだが、「お客様の場合、海外からの購入の制限が解除されています」と言われた。今はそうした解除は行っていないそうなので、一般的アドバイスにはできないだろう。益々わからなくなったのだが、各種ウェブ情報を見るに、アマゾンは2015年前後にアカウント結合というサービスを開始し、しかし、現在はこれをやっていない、というのでこれが関係しているのかも知れない、などと想像。
書籍以外のデジタルコンテントや各種サービスその他いろいろ考慮すべき点はあるだろうし、未だに、アマゾンの巨大ジャングルの中をさまよっている感じだが、ある程度わかったことを(自分の備忘録のためにも)まとめておきたい。より正確な理解があればぜひご教示願いたい。
最も正統的な解決法
この問題について、その背景も含めて最も系統的に解説してくれているのは大山賢太郎氏の下記記事だろう。
国境をまたいで売買される電子書籍の消費税をどっちの国に納めるかという税金の問題が背景にあることが解説されている。日本のKindle本も大元はアメリカのアマゾンから売られており、日本国内の人が買っても消費税が全部アメリカに持って行かれてはたまらない、という諸外国政府からの批判に対応する必要があった。アマゾンが勝手に仕組みを複雑にしたわけではなく、背景にさらに難しい税金の問題があったということだ。電子書籍などデジタル商品の消費税は、(売る方でなく)買う人の居住国に納めることが国際的な標準になりつつある。そのためアマゾンは、各国の居住者が基本的にその国のkindleストアから購入するような仕組みをつくった、ということだ。
大山氏の提案するこの問題への対応方法も正統的だ。海外に居る場合、日本のアマゾンから日本のアカウントで買うのでなく、その国のアマゾンサイトからその国のアカウントで買う。検索で日本語が使えないので不便だが、例えばその著者のローマ字名などで検索すれば出てくるだろう。
大山氏は、日本のアマゾンで書名を検索し、そのアマゾン書籍番号ASINを調べて現地アマゾンサイトでそれを検索する方法を紹介している。日本アマゾンの本購入ページのやや下の方、「登録情報」のところに例えば「ASIN : B07DYL1MHM」などと出ている。この番号を今度は例えば米国アマゾンの方で検索すれば、その本の紹介ページが英文またはローマ字で出てくる。そしてそれを買える、という訳だ。
番号を入力しても「そんな本ない」(No results for ….)と出て来る場合もある。これは、著者や出版社がその外国市場での販売手続きをしていないということだ。大山氏は、これに対しても、著者、出版社にメールなどで要望を出す方法を提案している。「そんな本ない」の検索結果が出たときに、アマゾンに要望を送る欄も出てくるので、まずはそこに何か書き込むのもよいかも知れない。
(著者や出版社が海外市場で売れるよう手続きしない理由がわからない。グローバル市場に展開する気迫がないのか。海外在住日本人の強い購買欲・読書欲を理解していないのか。私の本はどこの国でも買えるようにしてあるので、kazuaki Okabeで検索してほしい。と、さりげなく宣伝。)
「居住国」を日本に変更する方法
海外に住む日本人は、だいたい日本アマゾンのアカウントをもっているので、この方法を試せる。ない場合も、新しく日本アカウントをつくればいい。日本の実家などの住所、電話番号で日本アカウントをつくる。実際、日本に帰国した際、日本アマゾンから実家に商品を送ってもらうようなこともあるのだし。本人確認のためのメッセージ送信先を求められた場合は米国の携帯番号でも大丈夫だった。
アマゾンのヘルプに出ている通り、日本アカウントで、「アカウント&リスト」>「コンテンツと端末の管理」>「設定」>「国/地域設定」と進み、国指定が「日本」になっているか確認する。「不明」などになっていれば、改めて日本の実家の住所を入力して国設定を日本にする。「お届け先」の住所とは別なので注意が必要。この方法で、米国から日本アマゾンのKindle本を制限なく買えていることを確認した。あくまでも2021年1月時点で、だが。
つまり、アマゾンは、購入者の所在地をIPアドレスから認識するだけでなく、正式にはどこの住所に登録しているのかでも判断している、ということだろう。これを日本と登録していれば、アクセスしてきているIPアドレスがどこであろうとも購入できるようにし、日本国消費税の対象とするということでは。頻繁に海外に出る人が多くなった今日、こちらの方が有効な方法という気がする。
(補足)
例えば下記に、米国アカウントで他の国のKindle本を買う方法が伝授されている。
https://www.howtogeek.com/328197/how-to-change-your-country-on-your-amazon-so-you-can-buy-different-kindle-books/
https://www.justkindlebooks.com/article_jkb/how-to-change-your-kindle-country-of-residence/
Account&Lists>Content & Device>Preference>Country/Region Settingsから外国の住所を入力して国設定を変えればいい、ということだ。しかし、これは少なくとも日本の場合うまく行かなかった(2021年1月現在)。住所設定を変えてから日本サイトに行っても元の米国アカウトからサインアウトされている。あるいはすでに日本カウントを作成して使っていれば、自動的にそちらのアカウントに変わってしまう。元の米国アカウントで日本サイトにサインインしようとしてもそんなIDはないとはねられる。また、別途取得した日本アカウントに入った状態で居住国をアメリカなどに変えようとしても、日本サイトではそもそも住所が日本の住所しか入力できず、変えられない。
やはり、新しく日本のアカウントを別につくる他ないようだし、細かく調べるよりそうしてしまった方が早い。購入した日本Kindle本を別口のKindleリーダーで読むことになるが、英語本と日本語本を分けて入れておくのも悪くはない。
VPNを使う方法
いろいろアマゾンの密林で迷っているうちに、いっそVPNを使った方が簡単だ、と思うようになるかも知れない。実際、海外からは日本アマゾン電子本を買うにはVPN、という「常識」が広く普及しているようだ。使ってない人は難しく思うかも知れないが、海外居住者ならすでにかなりの人がVPNを使っていると思われる。動画閲覧などとは違い、Kindle本をダウンロードするくらいなら無料VPNサービスでも容量的には十分だろう。
無料本の買い方
日本アマゾンのウェブサイトは無料本が探しやすい。ツールバー左端「三すべて」>「キンドル本&電子書籍リーダー」>「Kindle本」まで行くと「無料本」の項目がある(米国アマゾンにはそういう選択肢がない)。これをクリックすると「5万件以上」の無料本が出てくる。漫画、アダルト系、ハウツーものが多いが、硬派を含めそれ以外の本もある。多すぎるので、左側のメニュー「Kindle本」をクリックしジャンル選択した方がいい。例えば「社会・政治」で709冊、その中のさらに「政治」を選択すれば113冊の無料本が出てきた。
難しそうな古典も出てくる。これはアマゾンの貢献ではなくて、ボランティア運営の青空文庫の努力のたまものだ。同サイトから入手するのが基本だろうが、アマゾンで入手すればそのままキンドル・リーダーで読める。
右上の「並べ替え」を「アマゾンおすすめ商品」「レビューの評価順」などとすれば、あなたが求める硬派本が上に出る可能性が高まるだろう。探せば「ちょっと読んでみようか」という本にぶつかるものだ。通常の有料本でも、時々無料キャンペーンを行うものがある。
また、日本Kindle本の入手に悪戦苦闘している最中、こういう無料本「購入」で実験を繰り返せる、というメリットもある。友人の中には、購入はできたのに読めない、などという人も居た。確実に入手できるようになるまで「無料」で試せばいい。
割引本・廉価本
電子書籍には再販制がない。出版社にとっては悪夢かも知れないが、価格本でもどんどん値引きされるのはありがたい。Kindle本で、「並べ替え」を「価格の安い順」にして表示させれば、割引本・廉価本が大量に見つかる。
この「並べ替え」表示が出ていない場合は、最下段の方の「すべての結果を表示する」(See all results)をクリックすれば出てくる。最初に大量の無料本が出てくるが、ここでも「Kindle本」をクリックしてジャンル選択すれば、無料本以外の割引本も見つけやすくなる。
なお、この方法は、無料本が探しにくい米国アマゾンサイトでも活用できる手法だ。Sort by: Price: Low to Highにすれば、最初の方に無料本が大量に出てくる。(ただし、日米共にそうだが、最初の大量の無料本の中になぜか有料本も混じるので注意。)