「未来都市」アスタナ

カザフスタンの新首都アスタナの空撮。2022年11月。Photo: Nikolai Bulykin, Wikimedia Commons, CC-BY-SA-4.0。

「世界で最も奇妙な首都」

アスタナは、草原の真ん中に突如としてつくられた未来都市型の首都だ。多くの風変りな建築が建てられ、米CNNから「世界で最も奇妙な(異様な)首都」の称号を得た

ソ連(カザフ自治ソビエト社会主義共和国)時代の1927年から独立を経て1997年まで、南東部最大都市アルマトイが首都だった。それが、当時のナザレバエフ大統領の強力なリーダーシップで北方の草原地帯に移された。遷都の理由をグーグル検索のAIに尋ねると次のような答が返ってくる。

「アスタナへの遷都は、旧首都アルマトイが抱えていた地理的な偏り、都市機能の限界、地震リスクといった問題を解決するためです。具体的には、より国土の中心部に近い場所へ首都を移すこと、アルマトイの過密と環境問題への懸念、地震が多い地域からの安全確保などが理由として挙げられます。また、ロシア人が多い北部の地域にカザフ人の人口を増やすという狙いもあったとされています。」

まあ、穏当なところだろう。AIというのは有力ウェブページから情報を集め平準的な回答を出してくれる。世の常識的な理解がどんなものか知るには便利な機能だ。しかし、これに加え、独裁政権の存在、石油マネーから来る潤沢な資金などの要因も加える必要があろう。

独裁政権の首都

独裁者というのは宮殿や首都を壮麗な愛玩物にしたい欲望をもつものだ。ユニークな高層建築の林立で有名な、今回の訪問先で言えばバクードバイなどはいずれも独裁政権下でつくられた街。アゼルバイジャン首都のバクーは共産主義時代からの指導者一族が現在に至るまで権力を握っている。ドバイは世襲君主の首長国で公的役職の選挙はない。

カザフスタンも、ソ連時代にカザフ・ソビエト社会主義共和国閣僚会議議長(1984年 – 1989年)、カザフスタン共産党第一書記(1989年 – 1991年)など要職をつとめたヌルスルタン・ナザルバエフが、独立後も大統領職に就いた。憲法改正やその拡大解釈で任期を伸ばし、2019年まで30年に及ぶ長期政権を維持した。大統領辞任後も国家安全保障会議議長として院政をしいた。アスタナへの遷都もナザルバエフが主導したし、一時その首都を彼のファーストネームにちなみヌルスルタンと改名したこともあった。死者230人を出す2022年反政府デモでついに失脚するが、ソ連後の民主化は、カザフスタンでは2022年まで引き延ばされた。

潤沢な石油マネー

そしてカザフスタンは石油・ガスの主要輸出国だ。2024年の世界の石油輸出額統計をみると、カザフスタンは461億ドルで世界7位。1位のサウジアラビア
(1756億ドル)や、ドバイを含む2位のアラブ首長国連邦(1531億ドル)にはかなわないが、カタール(14位)、オマーン(16位)、クウェート(17位)の上を行き、バクーを控えるアゼルバイジャン(21位、145億ドル)も上回っている。この潤沢な石油マネーが、高価な新首都づくりを可能にした。

首都の象徴バイテレク

新首都アスタナを象徴するモニュメント「バイテレク」。古代遊牧民の神話に出てくる「生命の木」を意味する。黄金のドームは聖なる鳥サムルクが産み付ける金の卵で、太陽を象徴しする。2002年完成、高さ105m。塔建設のアイデアは当時のナザルバエフ大統領によるもので、市街視察飛行の際にナプキンに描いたスケッチが元となったという。そのスケッチが初代大統領博物館に保管されている。遷都年1997年を記念する意味から、同塔展望台97mのところにナザルバエフ大統領の手形が設置されている。
その近くにあるアスタナで最も高いビル、アブダビ・プラザ(320m)。カザフスタン全体、中央アジア全体でも最も高い。そのすぐ前に防衛省ビルがあるが、こんな外国名の高層ビルの前で霞んでしまっていいのか、と心配になる。
バイテレクとアブダビ・プラザ。
西方向からアブダビ・プラザ。
アスタナの奇妙な建物を見て歩く。
同上。
同上。
同上。
街の南方から。

モスクも巨大で新しい

奇妙なビルを背景にヌル・アスタナ・モスク。2008年にできたばかりの「中央アジアで3番目に大きいモスク」。ドームの高さ40m、ミナレットの高さ63m、収容人員5000人。
2022年8月にできたばかりの「アスタナ中央モスク」は中央アジア最大という。ドームの直径62m、高さ90m、ミナレットの高さ130m、収容人員23万5000人。最近、世界中で新しい巨大モスクがつくれている。時期により、あるいは比較基準により「どこどこで何位」も変わってくる。あくまで出典の記事の明記して紹介している。
空港はさほど大きくない。これも未来型建築だが、空港はどこでもそうなるだろう。
街自体はゆったりして、住み心地はよさそうだ。

道路沿いにあったモニュメント。何だか不明。

大統領文化センター。ナザレバエフ大統領を記念してつくられた博物館。民俗、考古、歴史、軍事の広い分野にわたる。

無人運転高架型LRTを建設中

無人運転高架型LRTの建設が進行中。長らく腐敗の象徴として工事が停滞していたが、最近再開したようだ。中国企業と提携し、総延長22.4キロ、18駅で、2025年中の開通を目指している。

イシム側の北は旧市街

市内を横断するイシム川(写真)によって北側の旧市街と南側の新市街に別れる。旧市街と言ってもやはりソ連時代から遷都以後に発展した地域。最近の未来型建築の建設は新市街の方で進行している。イシム川は街を西進した後、北上し、北極海にそそぐイルティシ=オビ水系に入っている。
アスタナ駅は、旧市街のさらに北の端にある。私の入った安宿もその前。駅舎は、まあソ連式の伝統建築だろう。
未来型都市から抜け出てくると、駅舎のソ連式壁画がなぜかなつかしく、ほっこりする。