バクーの奇妙な高層ビル街

奇抜な形をした高層ビル通り

ヘイダル・アリエフ大通り。

バクー空港から市内に入ってくると、例えば上記写真のような奇妙な形をした高層ビルが立ち並ぶのを見て度肝を抜かれる。市内で最も幅が広くかつ最長のヘイダル・アリエフ大通りだ。これに沿って、多数の奇抜な形をした高層ビルが立つ。市の中心部側から空港方面にこの通りを見ると、下記の通りだ。

ヘイダル・アリエフ大通りの遠景。中心街側から郊外の方を望む。
その中央部分を拡大。
さらに踏み込んで撮影。この左の2棟は重なっているので見分けがつきにくい。横から見ると、
この通りだ。
バクーの新しい建築は皆ユニークな、あるいは奇をてらった形をしている。奇抜じゃなければ建築じゃない、と言うかの如く。マンションはともかく、ビジネス・ビルで四角い簡素な建物はあまりお目にかかれない。建築コストもかかると思うが、石油マネーで潤う街だ、カネに糸目をつけず奇を競うのだろう。道路わきのガソリンスタンド(右)さえ、奇をてらったデザインだ。
そのヘイダル・アリエフ大通りがはじまるところに、このヘイダル・アリエフ大通りセンター(広さ5万7,500平米、高さ74m)がある。これまた群を抜く奇抜さの文化センターだ。イギリスの建築家ザハ・ハディッドの設計で、2012年5月に完成した。中に会議場、展示場、大ホール、博物館などがあり、数々の国際的大規模イベントに使われている。
センターは広大なヘイダル・アリエフ公園の中にある。見通しのよい公園で新市街と旧市街の分かれ目になっている。
センターのある公園から旧市街方面を望む。こちらが中心市街だ。ヘイダル・アリエフ大通り側はいわば新興のビジネス街で、企業ビルは多いが、生活の臭いは感じられない。多くの車が走るが、歩く人は少なく、殺伐とした気分になる。

アリエフ家の政権が30年以上続く

ところで、「ヘイダル・アリエフ大通り」「ヘイダル・アリエフ・センター」とよく出てくる「ヘイダル・アリエフ」(人名)とはだれか。ソ連時代からこの地の指導者で、独立したアゼルバイジャン共和国の第3代大統領だった人物だ(1923~2003年、大統領在位1993~ 2003年)。ソ連邦下のアゼルバイジャンKGB出身で、すでに1969年にアゼルバイジャン共産党第一書記についた。ブレジネフ、アンドロポフから支持を得て、1982年にソ連の第一副首相、共産党政治局の地位にも着いた。ゴルバチョフとはむしろ対立し、政治局から引退している。そういう人が、独立したアゼルバイジャンで大統領になった。この国の民主化が不完全な形で終わったことを暗示している。2003年の死去の後、跡を継いだのは長男のイルハム・アリエフで、この人が今でも大統領を続けている。その妻が、2014年以来、第一副大統領だ。

この国は石油で潤っているので、矛盾が危険なところにまで先鋭化しないようだ。大統領一家と中枢エリートは石油利権で富を得、同族主義がはびこっていると国際的な批判を浴びている。米NGO「組織犯罪と腐敗報道プロジェクト」(OCCRP)は2012年に、この長男イルハム・アリエフを「マン・オブ・ザ・イヤー」に選んでいる。(アゼルバイジャン国内からはこのサイトにアクセスできないようで、確認できない。)

市中心部付近の高層ビル

さて、ヘイダル・アリエフ大通りのビル街は、どちらかと言うと周辺部の新興ビジネス街だ。今度は市中心部を見てみよう。世界遺産にもなっているバクーの城壁都市(イチェリ・シェヘル)近くに、展望のよいハイランド公園がある(かつてのキーロフ公園)。ここに登ると市全体、そしてこの街が演出してくれるユニークな高層ビルの全体が見渡せる。下記の通りだ。

ハイランド公園から見渡すバクーの街並み。右はカスピ海。遠くに霞んでコーカサス山脈。
主要部を拡大して見ると、奇抜な高層ビルがたくさん見える。左手に固まっているのが、上記で紹介したヘイダル・アリエフ大通りのビル街だ。近くの海岸沿いにもこれまたユニークな建物群があるのがわかる。
そして何より、このハイランド公園のすぐ脇には、贅の限りを尽くしたこのユニーク3棟ビルが建っている。フレイム・タワーズ(炎の塔)と呼ばれ、火の国アゼルバイジャンを象徴する建物と見られている。高さ182mで同国で最も高いビル。2012年に完成した。
下からは、まさに炎のように見える。夜になるとこの3つのビルがカラフルにライトアップされ、炎が揺らいでいるようになる。
新旧建築のとりあわせ。右は殉教者モスク。トルコ政府の支援で1996年に完成。古い建物ではない。
丘の上に立つバクーTVタワー。高さ310mで「アゼルバイジャン火力発電所の煙突に次いで」同国2番目に高い塔とのこと。1996年に完成。
海岸部の奇抜な建築。
海岸部の奇抜なデザインの建物。2020年に完成したばかりのショッピングモール「デニズモール」だ。アゼルバイジャン国旗にもある八角星をデザインしているとされる。
海岸部の奇抜な建物群。反対側(北側)からの眺め。
特にこの「クレッセント(三日月)ホテル」は、これからバクーのランドマークになりそうなユニークな建築だ。リッツカールトン系のホテルになるようだが、技術的な問題で完成が遅れている。三日月はイスラム教の象徴で、アゼルバイジャンの国旗にもあしらわれている。