ニューヨークの夏を耐える

「お父さん、この暑さの中で大丈夫か。」

7月20日、同じニューヨークに住む息子からメールが来た。寒暖計は33度を指している。この貧乏長屋の室内には冷房がない。窓を開けているが構造的に風は来ない。扇風機をつけっぱなしにしてても確かに暑い。老人の熱中症死を案じなければならないレベルだ。

昨夜は扇風機をまわしながら寝たがそれでも汗が出る。ドアを半開きにしたら涼しくなった。2階十数世帯の入る長屋中央階段上に1台のエアコンが回っているので廊下だけは全体的に涼しい。他の住人も、のれんを垂らしてドアを開け、涼しい空気を入れている。このアパートでは、あの1台のエアコンが居住者全員の生命線になっている。

「大丈夫だ。まだ30度台前半だろう。」と私はメールを返した。

これまでの最高は1か月前の6月13日の35度だった。それ以降、ほとんど30度を超えていない。ニューヨークは乾燥して風があり、外に出ている限りは結構涼しい。7月18日からの5日間、久しぶりに30~33度の暑さになったが、それでも1カ月前の35度よりましということを私はわかっていた。35度の時はさすがに部屋の中で息も絶え絶え。6月でこの暑さでこの先どうなるのかと不安になった。しかし、それ以後大したことなし。これなら乗り切れる。死ぬほどの暑さではない。

早い秋

「すっかり秋めいてきましたが、皆様お元気ですか」とおふざけで名古屋の家族にメールを送った。7月24日だ。昼頃に外に出たら肌寒い。短パンとTシャツだったが、部屋に戻り長ズボンと長袖シャツを着た。船で涼みながら、自由の女神にでも行こうとしたのだが、やめた。

そして翌25日、朝起きると、部屋の中でも肌寒く、長ズボンをはいた。寒暖計を見ると26度だった。この部屋は、外がどんなに暑くても寒くても不思議に30度前後を維持していたのだが、ついに26度まで下がった。冷房で冷やされる廊下の気温と同じだ。(気象台記録を調べると、24日の最高気温は23度、最低気温は18度、25日は最高21度、最低17度。)

ある程度わかっていた。気象統計によると、ニューヨークの暑さのピークは7月下旬。大陸型気候の特徴だ(太陽の高度、昼の長さに、より直接的に対応して気温が変わる。海洋性の国では、暑さ寒さが遅めに来る。偏西風の影響で、北半球の大陸東岸では大陸的気候が強くなる。西海岸は海洋性)。

このまま秋になるということはないだろうが、暑さも峠を越したということか。暑いのは困るが、寒いのは私はもっといやだ。

*その後、8月になっても30度を上回るのが数日あり、それほど急には秋にならなかった。

*大陸性気候について付け加えると、日本の酷暑の時期(8月上旬)に「立秋」が来るのは、大陸性気候の中国華北地方で生まれた「二十四節気」を海洋性の日本が後生大事に使ってきたから。ニューヨークよりさら大陸性の北京では、6下旬から7月が夏の盛りで、立秋を過ぎると涼しくなってくる。