口をあんぐりと開けて見ている:米朝会談

言葉が出てこない。ここ1カ月の北朝鮮の様変わり。2018年が始まるとき、東アジアでは数百万人の死者が出るのではないかとも心配される戦争が危惧された。その年の半ばに、このような、米朝トップが仲良く握手するような事態の変化をだれが予測しただろう。まるでカルチャーショックに出会ったように事態に追いつけず、それを表す言葉が出てこず、あんぐりと口を開けて見ている。

「世界の人々はこれをファンタジーやSF映画と思うだろう」。金正恩委員長が言ったという。当人が言うな。当人に言われて、なおさら外では付け足す言葉がなくなった。一言も発せず、だまって口を開けて見ている他ない。

彼はアジア専制国家の流儀に従って事を進めているだけなのか。冷酷な血の粛清で周りを平定し、恐怖政治によって指導的権力を獲得した。そうしてから自身の目標に向かう。たぶん彼も、西側のファンタジーやSF映画を楽しく見ていられる日常に魅かれていたのかも知れない。結局は、世界全体を覆う温暖な季節への変化が時代をうごかす力だった…。

権力中枢の保守派数千人をことごとく粛清して、実は彼は王朝革命を遂行しつつあったのかも知れない。多くの血が流れる暴力革命だった。しかし、民衆革命の混乱はなく、少なくとも外目には恐ろしいまでに堅固な体制が続いていた。

このまま、いい方向に進めばいいのだが。
いや、そこまで語れる時期ではない。今はただ口をあんぐり開けて見ている他ない。