ニューヨークに再び夏が来て、きょう(6月17日)は最高32度。明日は34度になるという。昨年6月13日、年間最高の34度になったのが思い出される。
いつの間にかニューヨークに住んで1年がたってしまった。季節の変化をたっぷりと味わうことできて、この地の気候がかなりわかってきた。
中緯度地域として当たり前だが、日本と同じく明確な四季がある。しかし、大陸性の度合いがより強い。6月に年間最高気温を記録するなどというのは大陸性の特徴だ。日の長さに正確に比例して寒暖がやってくる。日本のように大陸から海(日本海)で隔てられていると寒暖が遅れて来る。水は地面より熱しにくく冷めにくいからだ。しかし、ニューヨークは大陸の東端で、もろに大陸型の気候になる。
大陸性気候と四季
北半球中緯度では偏西風が吹いているので、天気は西から東に変わっていく。大陸西端では従って海の影響を受け、東端では大陸の影響を受ける。だから例えば私が前に住んでいたサンフランシスコなど、米国西海岸では海の影響で暑さ寒さが抑えられ、1年中春か秋のような天気が続く。ユーラシア大陸西端に位置するヨーロッパも緯度の割には年間を通じて穏やかな気候になる。
だが、ニューヨークのある大陸東端では、大陸の影響をまともに受け、すぐ東に大西洋があっても、西のアメリカ大陸の影響を強く受けてしまう。だからニューヨークは寒暖の差が大きく、冬寒く夏暑い。明確な四季がある。
実は日本も、大きく見れば「大陸の東端」に位置し、それゆえ明確な四季がある。しかし、日本の場合は島国で、西には日本海や東シナ海もある。大陸性気候はある程度緩和される。これに対しニューヨークはもろに大陸性気候になるわけだ。アジア大陸でも、大陸の本当の東端(中国大陸東海岸部など)はニューヨークと同じく、寒暖の差がより激しくなる。
日本に生まれ育った者としてはやはり四季があった方がいい。サンフランシスコに居た時は、一年中春か秋のような気候で、過ごしやすいが、時間のたつのが早い。気が付けば、「え、もう5年たったのか」になってしまう。目まぐるしく移る季節があるからこそ、「ああ、もう秋だ」「また春が来るぞ」などと時間の変遷を明白に感じることができる。
ニューヨークも今年の冬は特に寒く、連日零下10度の寒風の中で暮らした。何かかなり長い時間が立ったように感じる。何もしていなかったのに、人生を深くながーく送ってきたような気がする。
ニューヨークからサンフランシスコに行った友人が、どうもあの気候が好きになれず戻ってきた、というのはわかる気もする。
「台風」も来る
台風(米州ではハリケーン)が来るのも日本と似ている。サンフランシスコなど米西海岸にはハリケーンはまず来ない。ハリケーンに最も頻繁に襲われるのは日本同様、南の方、フロリダ半島から南部メキシコ湾岸にかけてだ。しかし、東部沿岸地域にも直接ハリケーンが来ることもある。
え、あの「台風」、一週間たってもまだその辺にいたのか、と思うことがある。メキシコ湾岸を襲って大きなニュース記事になったハリケーンが、アメリカ大陸を徐々に北上して、1週間たってもメイン州あたりをうろうろしていることがある。日本には「台風一過」という言葉があるように、暴風雨は一夜で収まり、翌日は打って変わった秋晴れになることが多い。三陸沖などに抜けた台風を人々はあっという間に忘れてしまう。しかし、広大な大陸国家では、激しく移動する「台風」もお釈迦の手の内を移動する悟空のような存在になってしまう。
レイク・イフェクト
天気予報で、「レイク・イフェクト」(湖水効果)という聞きなれない用語を何度も聞くようになった。ニューヨークは大陸東端に位置するが、その大陸の中ほど東寄りに五大湖という広大な湖沼群がある。ニューヨークの気候は基本的に大陸型だが、この湖沼の影響を一定程度受ける。つまり海に囲まれてはいないが、若干の海洋性を帯びる。
極端な寒暖がある程度緩和される。そして大陸からの乾いた風に大量の水分が吸収され、風下で降雨、降雪が強くなる(写真参照)。冬の寒さは米中西部やカナダで最も厳しいが、雪は五大湖の南東側の方が多い。
例えば、オンタリオ湖南東に位置するニューヨーク州シラキューズ市は、内陸中西部諸都市ほど寒くはないのに、全米で最も降雪の多い都市(年間平均294センチ)となっている。