最近うれしいことがあった。比較的近いところに正統派の中古品店を見つけ、そこで、就活用の背広、シャツ、ネクタイ、革靴を計21ドルで買えた。
サンフランシスコに居た頃、近くにNPO中古店チェーンのグッドウィルがあって、掘り出し物の中古品探しに毎日のように通った。当時、中古店は他にもたくさんあって、これが、人の使ったものなど使いたくないきれい好きの日本と違うアメリカ的な文化だ、と思っていた。
それが、今はあまりない。サンフランシスコでなくニューヨークだから、というより時代の違いだろう。中国・アジア製の安い日用品がたくさん出回るようになり、安い中古品を求める需要が弱まった。
ニューヨークにもマンハッタンなどにグッドウィルは何軒かあるが、ややお洒落ぎみなファッションのお店になっている。私の家近くの中華街、ヒスパニック街にも本格的な中古店はほとんどない。グーグル検索で中古屋だとされる店に行ってみると、ファッションに特化した古着屋さんであることが多い。今の時代、中古店の需要は、衣類と骨董品的なものに限れてきたのではないか。
アイリーン中古店
唯一、駅(D線9番アベニュー駅)近くのさびしい場所に、ヒスパニック系のおばさんが経営する小さな「正統派」中古店Aileen’s Thrift Store(1071 39th St, Brooklyn)があり、引っ越し当初、ここで随分日用品を調達させて頂いた。
ところが、ここ1~2週間、この店が閉まったままなのだ。どうしたのか。つぶれたのか。あのアイリーンおばさんが病気にでもなったのか。
店に入ると用心深くジロリと見るアイリーンさんだったが、私は最近よく来るので「お得意さん」という認識を少しは持ち始めてくれていたのではないかと思う。さびれた界隈で、周囲に人もあまり居ない。隣人に事情を聴こうと思ってもだれもいない。道路の向かいで昼休みしているヒスパニック系労働者に聞いたが、要領を得ない。「きょうは休みだろ」「午後から開くのでは」。いや、午後でも、何曜日に行っても開いていないんだ。
(後日談)8月も下旬になり、散歩がてらに家の近くの上記アイリーン中古店に出向いたら、営業していた。前と変わらずアイリーンおばさんが店番して、展示用中古品をかき回している。「先月は、店、閉めていましたね」と聞くと、おばさんは英語がよく理解できないようだった。「これいくら?」「15ドル。」といったやり取りはできるのだが(それはそうだ、商売に必須だ)、込み入った話はわからないようだ。「いいです、いいです」と会話を止めたが、元気でまた再開しているのは何よりだった。今後も末永く営業していってほしい。
ライフブティック中古店
近くの中古店が不調なので、7月末、グーグルマップで中古店をリストアップし、ブルックリンの中心部の方に自転車で出向いた。そしたら、中心部まで行かないところに、まさにかつてのグッドウィルのようなお店を見つけたのだ。5番アベニューと13番ストリートの交差点(Life Boutique Thrift, 515 5th Ave, Brooklyn、最初の写真)。「ブチック」など名乗っているのであまり期待していない店だった。
1階と地下があり、古着だけでなく、古い電気スタンドとか食器とか、使えそうもないスピーカーとか、なつかしい正統派日用品が大量に置いてある。かつてのグッドウィルと雰囲気が似ている。小児がん患者を支援するNPOがやっているという。これもグッドウィルと似た点だ。
素晴らしい。ここなら私のところから歩いても30分はかからない。これから折を見てはくることにしよう。この間、新しいズボンも10ドルで買ったし、これで私の就活道具も整った。
ビッグリユース・ブルックリン
そして、数日後のきょう、ニューヨーク市博物館(マンハッタン)に行こうと自転車でアパートを出た。しかし、途中、ブルックリンン中心部に差し掛かるあたりで、「ウォーターフロント」行きの自転車レーンの表示が目に入り、左折してそっちに行ってしまった。すると人生が変わる。
素晴らしい。機能しなくなった古い港湾施設跡地が続き、所々に海岸公園がある。眺めがいい。ロウアー・マンハッタンの高層ビル街が間近に見える。自由の女神も近い。天気がよく、フェリーやボートが頻繁に横切っていく。ニューヨーク市博物館に行くのをすっかり忘れてしまった。
その帰り道だ。海岸倉庫地帯を出たばかりのところに、新たな中古店を発見した。グッドウィルどころではない。巨大な倉庫のような中古店だ(Big Reuse Brooklyn, 69 9th Street,,Brooklyn )。
タンス、テーブル、イス、ソファーなど巨大家具がたくさんある。外されたドアが大量に立てかけてあるのにびっくりした。これも売るのか。はずされた窓枠もある。流しの陶器やバスタブや冷暖房器具、配管類・・・すさまじい巨大家財道具類に圧倒される。
もちろん小物類もいろいろあり、古本も結構あった。立派だ。これだけのガラクタ中古店が今でも残っている。さすがアメリカだ。私の中古店レパートリーがまた広がってうれしくなった。
が、買いたいと思うものが何もなかったのにはまいった。
(補足)ブルックリン中心部の中古店
グッドウィル
後日(10月になっていた)、家からは遠くなるが、ブルックリン中心部まで出向き、中古店を探索した。古着屋さん的な店以外の「正統派」中古店では、やはりグッドウィルが代表だろう(Goodwill Industries Store、258 Livingston St.)。障害者など社会的弱者に職をつくることを目指したNPOの中古店チェーン。米国、カナダを中心に3200もの店舗をもち、年間売り上げは42億ドル(ウェブページによる)。日本のデパート最大手、伊勢丹の2倍の売り上げだ。もちろん米国では最大の中古店チェーン。ブルックリンのグッドウィルも広々として他の中古店とは趣が異なる。入店する際、バックパックを預けるよう指示されたのには驚いた。こんなことは中古店ではグッドウィルだけだろう。
救世軍とアウト・オブ・ザ・クローゼット
そしてこのグッドウィル周辺に多くの中古店が集まっている。特にアトランティック通り沿いに多い(アトランティック・ターミナル・モールの西側の方向)。この通りでは救世軍(Salvation Army Family Store、436 Atlantic Ave)とアウト・オブ・ザ・クローゼット(Out of the Closet 、475 Atlantic Ave)が「アンカーストア」になっていると見た。付近に、ディスカウント店、アンチーク店などが多い。救世軍の真向かいに倉庫のようなカーペット店もあった(Better Carpet Warehouse)。
救世軍もアウト・オブ・ザ・クローゼットもグッドウィル同様、社会的弱者に職を生み出しながら活動資金をつくるNPOビジネスモデル。救世軍は米国内に1200以上の中古店を展開し、中古店チェーンと言えば、米国人はグッドウィルか救世軍を思い浮かべる。アウト・オブ・ザ・クロゼットはエイズ患者支援のNPOで、全米20店舗の売り上げで活動資金を調達する。ブルックリン店は古本が多い印象。地下の家具売り場の横で無料のエイズ検査も受けられる。