気温40度台連続、雷雨、デスバレー54度、遠くにハリケーン

3日連続40度台

おととい8月14日に摂氏41度を記録してから長い熱波の期間が始まったようだ。翌15日も41度、16日は40度。

16日には、何と早朝に雷雨が来た。日本で夏の雷雨は珍しくないが、カリフォルニアでは極めて珍しい。未明からごろごろ鳴りだし、犬が吠える。そのうち雨も降ってきた。6月にコンコードに戻ってきてから初めて雨だ。いや、去年の夏の数カ月もまったく雨はなかった。サンフランシスコ地域に計15年以上居るが、真夏にこんなまとまった雨が降ることがあったか。

カリフォルニアは地中海性気候で、冬雨が降るが、春から夏にかけてほとんど雨が降らない。沿岸部に霧が出るが、内陸ではそれもなく、カッラカラに乾いている。

1600の落雷、76の火災

あわてて起きてネットニュースを見る。記事に、「雷雨に驚いて起きたというなら、それはあなた一人ではない」とあった。「ノンストップの連続カミナリが湾岸都市圏を襲っている」「数百の落雷、多数の火災が発生」などとある。こっちの雷は日本と違って徹底的に乾いたところに落ちるので、すぐ火事が発生する。近くのディアブロ山でも山火事が発生したとある。見晴らしがいいところに行って写真を撮ろうと思ったが、雷が続いているのでやめた。雷雨が収まって数時間たった昼頃、いつも散歩する丘に登ったが、すでに煙はなかった。(結局この日、北カリフォルニアで1600の落雷があり、76の火災が発生したという。)

なぜこんなことが起こったのか。予報では何も聞いていない。気象情報をあさるが、昨日までの熱波の注意が出ているばかりだ。気象予報機関にとっても想定以上だったようだ。気象図や衛星写真を見ているうちに、サンフランシスコ都市域を南西から通過する雨雲の帯が、遠くメキシコ南部沖の太平洋上から伸びているのに気づいた。熱帯低気圧から吹き出しのように雲が伸び、それがはるか北カリフォルニアにまで届いている。日本の気象衛星図でよく見る台風の吹き出し雲のようだ。あるいは、太陽表面爆発で起こる太陽フレアのようにも見える。

こんなのを見るのは初めてだ。カリフォルニアの雨と言えば、冬に西(北太平洋)の方から順繰り襲ってくるのが定番。南から? どういうことだ。日本のTV気象情報ほど、迅速に解説が出て来るわけではない。いずれにしても熱帯性の湿った空気がカリフォルニアにまで押し寄せてきて雨を降らせ、カミナリ様を轟かせているのは確かだ。

フロリダと同じ

熱波がこの雨で収まることはうれしいが、確実に異常気象だろう。…と思っていたが、何のことはない。この16日も、水銀柱はぐんぐん上がり、午後4時には40度を記録した。まあ、前日よりは1度下がったからありがたく思えということか。空気が湿気を帯びてきた分、さらに状況は悪化した。これじゃ日本の蒸し暑さと同じだ。夜のTVニュースで、気象解説者が「フロリダと同じになってしまいました」と言っていた。

デスバレーは54度

一方、雷雨の影響を受けなかった内陸の砂漠地帯デスバレーではこの日(16日)54度を記録した。1913年に同地が出した世界記録56.7度までもうちょいだ。ニュースが「デスバレーで(華氏)130度を記録」と大々的にやっていた。1913年以降では最高記録だという。

カリフォルニアの地形図とデスバレーの位置。 Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0

50度の空気を体験したことがあるか

暑い時には、さらに極端に暑い所の話を聞けば、少しは心が和むというものだ。私もデスバレーのことで気休めを求めているのだが、今熱暑で苦しんでいる日本の方々にもこんな話をしてあげれば役立つだろう、と思おとるんじゃ。

私はデスバレーには行ったことはない。しかし、別の場所で50度前後の気温を体験したことはある。中国・新疆ウイグル自治区トルファン郊外の火焔山だ。西遊記に出て来る火の山。ここも、草木が一本も生えない灼熱の砂漠地帯だ。2004年8月18日に行ったとき、午前9時にすでに外の寒暖計が50度を超えていた。日陰地上1.5mでの公式観測ではさすがにここまではならないが、夏に最高気温50度を超すのはまれではないという。正式記録にはならないが、人工衛星からの地表温度測定では2008年に年間世界最高の摂氏66.8度をたたき出している。

前日にトルファンの街に着き、冷房のない市街行きバスで異様な熱気に襲われていた。窓の外からの風、というより熱い空気が押し寄せ、体がほてりだす。キャンプファイアーの火に近づきすぎると熱くて危険を感じるがそれと同じだ。乗客が一斉に窓を閉めた。そうしないと危害を及ぼしそうな風。どれだけ暑くとも、車内を密封しなければならない。

夏に50度を超すことも珍しくないトルファン・火焔山地域(中国・新疆ウイグル自治区)。火焔山(写真)は西遊記の舞台ともなった火の山。山腹の崖自体が、まるで炎のように亀裂が走っている。デスバレーより恐ろしそうに見える。

湿気のある雲に覆われた

翌17日、コンコードは幸いにも36度どまりだった。しかし、明らかに湿気がある。空が雲に覆われている。熱帯的な生気に満ちた雲だ。カリフォルニアの夏は、雨どころか雲さえまったくないのが普通。乾いた大地からからっぽの空洞が青い天まで貫かれる。それがいつにない蒸気で満たされているようだ。

デスバレーはこの日も53度を記録した。

メキシコ沖のハリケーン

この日あたりから、メキシコ南部沖太平洋上のハリケーンのニュースが増えたように思う。いや、私が注目するようになっただけかも知れない。大西洋側に比べると太平洋側のハリケーンは少ないが、それでも一定程度は発生する。今年はこの海域での低気圧の活動が活発だという。

現在は、大型ハリケーン・ジェネビーブがメキシコ沖を北西方向に進んでいる。進路をそのままたどると、カリフォルニアに来るように見える。すでに、その吹き出しの雲が大きく弧を描いて米西海岸に到達しているのがわかる。おととい朝の雷雨は、この一つ前のハリケーンからの吹き出し雲だったようだ。

米大陸西岸沖には北から寒流が流れ込んでいるので、ハリケーンは北上するにつれて弱まる。巨大な熱波高気圧団にはばまれ、カリフォルニアに近寄ることもまずないだろう。しかし、その影響は、長大な吹き出し雲などを通じて充分カリフォルニアに届く。湿った空気、雷雨などがもたらされる。

なるほど異常気象だ。少なくとも、北カリフォルニアの天気で、こんな南方海域に注意を向けるようになったのは初めてだ。