アメリカに居た方が日本の雑誌がよく読める

たとえば下記のウェブページ、私の住むサンフランシスコ都市圏内アラメダ郡立図書館の電子図書館を見てほしい。これだけの日本の雑誌・新聞がアメリカの図書館ネットを通じて読める。

アラメダ郡立図書館の雑誌データベース(PressReader)に含まれる日本の雑誌・新聞のリスト。同館の雑誌・新聞データベース一覧(ホームページからeLibrary -> magazines & newsと進んでも可)から、PressReaderを選び、同郡内図書館の利用カード番号とパスワード(最初に設定)を入力すれば同データベースに入れる。CountriesでJapanを指定すれば上記リストが出る。

『ノンノ』とか『家庭画報』とか『メンズクラブ』とか私がほとんど読まない雑誌も多いが、『エコノミスト』『プレジデント』『毎日新聞』『Japan News』(読売の英字版)など硬派の雑誌・新聞もある。日本でも、近くの図書館に行けばこれくらいの雑誌・新聞が読めるが、今はコロナで閉館しているだろう。しかし、電子図書館の発達したアメリカに居れば、図書館建物が閉まっていても、こうした日本の雑誌・新聞が家からオンラインで読めるということだ。

PressReader

この日本語雑誌を閲覧させてくれているのは、PressReader社(本社カナダ・バンクーバー)が提供する同名の雑誌データベースだ。英文誌を中心に世界100カ国、60言語、4000紙誌を最新号から2カ月程度前のものまでカラー、全文で出しており、その中に日本語の約50紙誌も含まれるということだ。個人が有料でこの雑誌データベースを購読することもできるが、アメリカの多くの図書館がそれを無料で提供し、だれでも使えるようにしている。

アメリカの発達した電子図書館

アメリカでは現在、電子図書館が急速に拡大している。どんな辺鄙なところに行っても、いや辺鄙なところであればあるほど、電子図書館は充実しており、全米の公共図書館全体ですでに電子書籍「所蔵」数が、印刷書籍とほぼ同等になっていると推定される。連邦政府機関「博物館・図書館サービス院」(IMLS)の調査によると、電子書籍所蔵数は、2015年度段階で印刷書籍の43.8%2017年度段階では64.8%にまで増えていた。視聴覚資料(これもダウンロード形式ものが増加)などを含めると、すでに米国図書館で印刷物の蔵書は半分を割っている。

雑誌・新聞は、英語のものなら数千を超える紙誌の全文テキスト・データベースが使える。そのほんの一部に日本語の紙誌や電子書籍も紛れているということなのだが、しかし、それだけでも日本の状況から見れば、驚くほど充実している。米電子図書館の全貌については別途、拙著『アメリカの図書館を使い倒す -記事データベース、E-BOOK』(アマゾン電子本)で紹介した。このブログ記事ではあくまで、日本語の雑誌・新聞がどれくらい読めるかの側面に絞り(かつサンフランシスコ都市圏の図書館を例に)紹介している。

日本語雑誌がある程度入るのは次の3雑誌データベース

電子図書館内で、日本語の雑誌・新聞がある程度(50紙誌程度)まで入っているデータベースは次の3つだ。

  1. PressReader
  2. Zinio/RBdigital (Overdrive)
  3. Kono Digital

米国内多くの図書館で、このうち一つくらいは(大規模館なら3つ全て)入れているので、現在使っている地域図書館のネットを探してみるといい。まだの人は、ぜひ利用カードを取得しよう。住所さえあれば、国籍・滞在資格にかかわらず取得できる。大規模館は州民であれば市外居住者でもカードが取れるのが普通。また、一時滞在者に3ヵ月など一時利用カードを出すところもある。パスポートと住所のわかる家賃領収書などを見せればOK。

最下段の表で見る通り、サンフランシスコ都市圏で最も規模が大きい公共図書館は中心都市サンフランシスコの市立図書館(San Francisco Public Library)、次いで湾東地区のコントラコスタ郡立図書館(Contra Costa County Library)、上記アラメダ郡立図書館(Alameda County Library)、オークランド市立図書館(Oakland Public Library)だ。このうち、サンフランシスコ市立図書館は上記3データベースすべて、アラメダ郡立図書館は1、2、オークランド市立図書館は2、3が入っている。そして、この3館は、市内・郡内居住者だけでなく、州内居住者ならだれでも図書利用カードが発行される。全カリフォルニア州民は少なくともここを通じて日本語雑誌が読めるということだ。

市外居住者も電子図書館にアクセスできる

カリフォルニア州にお住まいの方なら、サンフランシスコ地域に来たついでにこうした図書館で利用カードをつくったらいいだろう。もちろん、ロサンゼルス市立図書館(Los Angeles Public Library)、ロサンゼルス郡立図書館(Los Angeles County Library)その他大規模館は同様の電子図書館が整備され、かつ州内居住者すべてに開かれているから、そこでカ利用ードをつくってもいい。また、現在はコロナ禍の影響もあり、図書館建物に行かなくても電子情報利用だけのeCardをオンラインで発給するところも増えている。

前出すべての図書館でこうしたeCard発行を行っているが、大都市の図書館ほどそれを域内居住者に限定する傾向がある。サンフランシスコ、ロサンゼルスの図書館がそうだ。やや小さめの図書館の方が州民全体へのeCard発行を継続している。が、あまり小さいと電子資料自体も見劣りがするので、ほどほどの中規模館を狙うのがよいことになる。その点、上記アラメダ郡図書館やオークランド市立図書館はいい選択だ。州民全体にeCard発行を行い、オンラインで住所や携帯電話番号を入力すれば利用者番号が発行され、すぐ電子図書館が使えるようになる。

サンフランシスコ市立図書館の本館。1996年に新装開館した「電子図書館」の先駆けと言われる。当時から、300台の一般利用インターネット端末を装備し、多数の新聞・雑誌全文データベースをオンライン提供していた。周囲の歴史的建造物に合わせるため、外観は古風につくってある。

Zinio/RBdigital

アラメダ郡立図書館を例に日本語雑誌データベースの説明を続ける。1のPressReaderに次いで2のZinio/RBdigital。

Zinioは世界3000誌を提供する雑誌データベース(英語では「デジタル・ニューズスタンド」などと言う)で、現在は、電子図書館事業大手のオーバードライブ(本社、米クリーブランド)が提供している。同社が今年、RBmedia社からZinioを含む図書館関連事業RBdigitalを買収した。今後徐々にオーバードライブの中に一体化されていくと思われるが、図書館によってはまだ「RBdigital」などと表示されている。

オーバードライブは世界78カ国5万の図書館、学校を対象に電子書籍、オーディオブック、雑誌データベースを提供する電子図書館事業の巨人。ここにデジタル雑誌事業を加えてさらに強力になった。このオーバードライブ、実は去年まで楽天傘下に居た。2020年6月から米投資会社KKR傘下に入ったばかりで、この業界、なかなか活発な合従連衡が行われている。

他のデータベースでも同様だが、Zinio/オーバードライブを使うには、図書館ウェブページから外部データベースに接続する形を取る。アラメダ郡立図書館ホームページでBrowseからmagazines & newspapersに入り、Overdriveを選ぶ。図書館の利用者カード番号と最初に設定したパスワードを入力して中に入ると、そこは電子書籍を中心とした電子情報があふれるオーバードライブの世界だ。その初期ページでCollectionからeMagazines!の項目に入っていくと、Zinioの内容と思われる分野にたどり着く(Zinioの表示はない)。そして、LanguageでJapaneseを指定すると新刊の日本語雑誌約100冊が出てくる。硬派では、一橋ビジネスレビュー、週刊東洋経済、Think!シンク!、月刊ニュースがわかる、プレジデント、サンデー毎日などが目に入った。

一般の電子書籍の場合、貸し出されていれば、他の人は借りられない(所蔵枠が一冊の場合)。しかし、こうした「ニューズスタンド」型データベースでは、制限なく何人でも借りられる(3週間まで)。自分の貸し出し枠にも加算されない。ただし、アメリカの公共図書館の貸し出し制限冊数は非常に多く、アラメダ郡立図書館の場合100冊まで。まず使い切ることはないだろう。

Kono Digital

次いで3のKono Digital。これは、上記アラメダ郡立図書館にはない。どうしてもその中の雑誌が見たい場合は、Kono Digitalを導入している図書館のリスト(概ねカリフォルニア州の図書館が中心のようだ)を見て、自分の地域図書館からアクセス可能かどうか調べ、導入していないようであれば、リスト中の図書館の利用登録をする必要がある。この場合も、域外州民を受け入れ、かつオンラインで即利用可になる図書館を選ぶのが得策だろう。(お薦めはオークランド市立図書館。サンフランシスコ都市圏では4番目に大きい公共図書館だ。)

Kono Digitalは同名の台湾系シリコンバレー企業(本社マウンテンビュー)が提供する雑誌データベースだ。中国語の雑誌が中心で、趣味などの分野を中心に日本語の雑誌も65件入っている。ナビゲーションも日本語化されているので使いやすい(下記の通り)。

オークランド公共図書館から入ったKono Digitalの日本語雑誌リストの初めの方。

kono Digitalでは収録する日本の代表的な雑誌として、次を例示している。「週刊SPA!、non-no、Begin、25ans、Mac Fan、GoodsPress、Lightning、MEN’S NON-NO、GetNavi、MONOQLO、家電批評、ELLE JAPON エル ジャポン、婦人画報、2nd、Harper’s Bazaar ハーパーズ バザー、MEN’S EX、デジモノステーション、MEN’S CLUB、オレンジページ、dancyu、VOGUE JAPAN」

どこの図書館から入っても、案内に従って結局Kono Digitalのサイトに飛ぶことになるので、いきなりKono DigitalのホームページKono Librariesからはじめてもかまわない。その中で自分の使っている図書館を選ぶ。最初に、(図書館側の登録とは別に)Kono Digital側の登録(アカウント作成)が求められる。その際に自分の図書館の利用カード番号を入力すれば無料でKono Digital登録ができるという仕組みだ。

台湾の電子図書館でも日本語雑誌が読める

Kono Digitalは台湾系なので、台湾や香港に強い。そこの公共図書館、大学図書館などにもサービスを提供している。台湾に住む日本人、あるいは日本語を勉強している台湾人、香港人の方々もこここの日本語紙誌を自由に読める。読めないのは、日本在住の日本人だけだ。(本屋で雑誌を買うか、「楽天マガジン」など最近出てきた「デジタル雑誌サービス」に有料で加入して読む選択肢はある。)

日本の図書館電子化が遅れているため生まれた珍現象と言える。このまま行くと、将来、日本国民は、日本の雑誌・新聞も電子書籍もすべてアジア諸国やアメリカの図書館を通じて読むようになるのではないか。

日本からアメリカの電子図書館が使える

そしてその方向が一歩踏み出されてもいる。アメリカの一部公共図書館が数十ドルから100ドル程度の年会費で、日本(外国)からアクセスできるサービスを始めている。熱心な電子図書館愛好家の方が、域外・州外居住者にも有料で利用カードを発行する米国図書館を調べ上げてくれた。その中で、国外居住者にも利用カードを発行してくれるのは次の2公共図書館だという。

  1. フロリダ州オレンジ郡立図書館
  2. ニューヨーク州クイーンズ公共図書館

私も2年前にこの辺の事情を調べたことがある。カネさえ払えば、世界のどこからでも、アメリカの発達した電子図書館が自由に使える時代になってきた。電子図書館に国境はないから、各国の図書館は自国資料についても強力な国際競争にさらされることになった。申し訳ないが、黒船でどんどん刺激されることは日本の図書館にとってもいいことだと私は思っている。

日本から年50ドルでNYクイーンズ公共図書館が利用可能

前にも紹介したが、ここでは、その一つ、ニューヨークのクイーンズ公共図書館の例を見てる。アクセスの仕方が少し新しくなった。

ニューヨーク市の公共図書館は3システム(いずれも独立したNPO立図書館)に分かれており、その一つがクィーンズ公共図書館(クィーンズ区対象)だ。全米トップの公共図書館、ニューヨーク公共図書館(蔵書2500万冊、マンハッタン区、ブロンクス区対象)ほどではないが、クイーンズ公共図書館も、蔵書570万冊で全米7位の公共図書館だ。貧弱な外見にもかかわらず、サンフランシスコ公共図書館(310万冊、22位)より規模が大きい。

ここでは、州外・国外居住者も、年50ドルの料金を払えば図書利用カードが取得でき、豊富な電子図書館サービスが利用できる。すべてオンラインで手続き可能で、料金はクレジットカードで払える。図書館利用カード申請の説明ページから、Library eCard申請ページに進み登録を行う。州外居住者であることを選ぶ。住所では外国の国名も選べるようになっている。

ニューヨーク市クイーンズ区にあるクイーンズ公共図書館の本館。じょん・F・ケネディ空港にも近いジャマイカ地区にある。

日本語資料へのアクセスはまだ限定的

ニューヨーク市のクイーンズ区(郡でもある)は、「全米で最も人種的・民族的に多様な郡」とされ、特に中国系や中南米系の移民の人たちが多い。したがって、その電子図書館も、中国語とスペイン語のデータベースや電子書籍が充実している。中国語圏や中南米の人たちはアメリカの図書館を通じて有り余るような母語情報が得られる。日本語情報はあまり多くない。日本語雑誌も、前述2のZinio/RBdigital (Overdrive)が入っているが、RBdigital側への接続時に、クイーンズ区内の分館名や米国の郵便番号の入力が求められ、先に進めないようだ。今後、Zinioがオーバードライブのプラットフォームに入っていく中で改善されることを期待する。

フロリダ州のオレンジ郡立図書館も、RBdigital には入っているのだが、約200誌しか雑誌がないようで、日本語雑誌は含まれないと思われる。

ということで、現時点では、日本の日本人が日本語雑誌を読むために、米国図書館に接続するメリットはない。また、たとえ今後50誌程度が読めるようになっても、メリットはさほど大きくないだろう。日本語雑誌を読むだけなら、例えば日本のデジタル雑誌サービス「楽天マガジン」は、月418円、年3960円で500誌以上が読める。アマゾンの「Kindle Unlimited」は月980円で、雑誌約350誌の他、12万冊以上の電子書籍も読み放題になる。

が、言うまでもないが、日本から金を払ってまでアメリカの電子図書館に接続するのは、膨大な英文データベースが利用できるからだろう。そのほんの一部におまけとして日本語雑誌も50誌ほどついているに過ぎない。それだけを目的に年50ドル(5500円)払うのではペイしない、というのは、まあ当然と言えば当然だ。

表:カリフォルニア州の主要公共図書館 2018年度統計

(書籍など「印刷資料」蔵書数の多い順に30位まで。州内には計185の公共図書館システムがある。数字は分館データも含む。大規模館ではロサンゼルス郡立の85、同市立の72をはじめ数十の分館をもつのも少なくない。)

図書館名 対象人口 印刷資料 電子書籍 視聴覚資料 貸し出し数
1 ロサンゼルス市立図書館 4,040,079 5,826,763 425,362 709,520 17,110,137
2 ロサンゼルス郡立図書館 3,382,355 4,272,527 525,682 1,043,374 15,131,821
3 サンディエゴ市立図書館 1,420,572 2,534,304 196,149 328,629 8,037,305
4 サンフランシスコ市立図書館 883,869 2,151,164 205,341 600,535 11,730,624
5 サンノゼ市立図書館 1,043,058 1,798,196 244,170 442,081 7,785,272
6 サンタクララ郡立図書館 444,567 1,479,515 122,562 508,910 9,995,370
7 オレンジ郡立図書館 1,645,613 1,392,906 427,961 296,608 7,619,637
8 サンバーナーディノ郡立図書館 1,284,036 1,154,112 50,275 122,196 6,024,761
9 リバーサイド郡立図書館 1,339,695 1,081,092 6,624 178,881 2,530,529
10 サクラメント市立図書館 1,466,339 1,024,904 112,590 178,955 8,115,234
11 コントラコスタ郡立図書館 1,045,443 1,002,067 157,149 146,510 6,511,239
12 サンディエゴ郡立図書館 1,127,296 991,461 97,254 387,003 11,222,939
13 アラメダ郡立図書館 589,666 959,000 178,877 222,711 5,415,386
14 オークランド市立図書館 456,202 843,404 453,398 167,561 2,857,658
15 ストックトンサンヨッキン郡立図書館 702,113 828,654 16,331 80,771 1,342,474
16 カーン郡立図書館 916,464 737,470 357,107 421,149 1,042,976
17 フレズノ郡立図書館 990,451 734,929 55,849 211,668 3,122,069
18 ソノマ郡立図書館 500,675 668,088 196,745 257,084 3,446,831
19 ロングビーチ市立図書館 475,013 667,450 14,776 62,834 1,272,467
20 パサデナ市立図書館 146,312 566,251 28,700 40,179 1,266,378
21 スタニスラウス郡立図書館 558,972 563,993 354,619 388,026 1,650,030
22 アナハイム市立図書館 359,339 467,609 7,085 27,030 1,006,276
23 バークレー市立図書館 123,328 421,608 477,950 458,811 2,404,592
24 ソラノ郡立図書館 384,673 418,011 38,938 179,733 1,457,843
25 サンマテオ郡立図書館 285,263 404,668 407,648 481,697 3,703,727
26 サンタクララ郡立図書館市立図書館 128,717 389,531 422,521 406,241 2,509,201
27 オクスナード市立図書館 209,879 389,367 486,759 424,001 269,791
28 サンタモニカ市立図書館 93,593 384,766 332,774 397,819 1,336,212
29 トーランス市立図書館 148,054 383,010 4,933 85,202 1,101,149

出典:California State Library, California Public Library Statistics, 2018-19, (Start 2018-07) 

*カリフォルニア州は州政府直轄の郡の中に市が設立されるという地方政府形態をとっている。例えばロサンゼルス郡内にロサンゼルス市、ロングビーチ市、パサデナ市その他が、アラメダ郡内にオークランド市、バークレー市その他がある。上記表で見るように大きめの市は独自に市立図書館を設立することが多い。設立しなかった市や無自治体地区(アメリカにはそういう地域もある)は、郡立図書館などの中に組み込まれる。サンフランシスコの場合は郡と市が合体しているので単一の公共図書館システムがあるのみ。なおニューヨーク州などには大御所のニューヨーク公共図書館をはじめNPO立の公共図書館もあるが、カリフォルニア州は公立のみ。ただし、市立、郡立の他に一部事務組合的な特別区立、教育委員会的な学校区立などもある。