イスタンブールからまたバスでアテネまで帰るのは芸がない。船(フェリー)で行くことにした。2023年1月初旬、トルコ西部のイズミールにバスで行き、その近くチェシュメからキオス島経由でアテネの港湾都市ピレウスまで船で行った(キオス島まで25ユーロ、そこからピレウスまで39ドル)。あまりポピュラーでない経路なので、体験を記しておけば他の人の参考になると思い、書いておく。イズミールからは、具体的には次のようになる。Izmir ->地下鉄、バス-> Cesme ->船-> Piraeus ->地下鉄-> Athens。また1月の閑散期の情報であることに注意のこと。
トルコから直接アテネに行く船はないようで、どうしてもトルコ本土近くのキオス島に船で行ってギリシャに入り、そこからピレウスまで別の船で行くという形になる。他のルートもあるようだが、このルートが一般的と思われる。
オンラインでの船便予約
予約はオンラインでできる。Ferryscannerが便利だ。一度キャンセルしたりしたが、英語メールでのサポートもしっかしりしていた(キャンセルは4日前までなら料金が全額返還される仕組みのようだ。だが私の場合なぜか3日前でも全額返還された)。チェシュメからキオス島までは1時間ほどで行ける近場にもかかわらず月火木は便がなく、先にその先を予約してしまうと乗り継ぎができなくなることがあるので注意。キオス島からピレウスまではほぼ毎日1~2便ある。しかし、まれにない日もあるので、よく予約サイトを見なければならない。チェシュメを夕方出て、キオス島でその夜の便に乗り換え、翌朝ピレウスに着く、というのが基本だ。しかし、キオス島を昼出る船もあったり、やはりサイトをよく見る必要がある。また、キオス島には2つの港があり、普通はトルコ本土側のChoraで乗り換える。しかし、中にはその反対側のMestaからしか出ない便があったりするのでこれも要注意だ。とにかく予約サイトでスケジュールをよく確認するのが大切ということだ。
イズミールからチェシュメ港まで
まずはイズミールから地下鉄M1の終点Fahrettin Altayまで行く。外に出て大きなショッピングモール左横の公園を西に歩いて行くと、階段で降りていく先にバスターミナルがある。たくさんのバスが停まっているが、Cesme行きのバスはそのエリアに入る手前、通路(道路)沿い最奧。乗り場係のテーブルが出ている。
チェシュメに行きたい、というと70リラ(約500円)だ、と。CesmeのCの下にあご髭?が付いているアルファベットは、トルコ語では「チ」と発音するらしい。Sの下のあご髭は「シェ」か。セスメでなくてチェシュメとなる。案内にはインターネット何たらと書いてあるから、ネット予約した人がここに来るようだ。が、予約なしで言ってももちろん売ってくれる。カネを払うと座席指定はしてはくれたが、切符はくれない。まあ、その辺で待っていれば間違うことはない、ということらしい。
来たバスはなかなかいいバスだった。満員になり、座席が足りなくなり、2人が乗降口の階段に座った。バスは海の見える高台の高速道路を快適に走り、約1時間で街に下りる。いろいろ停まるが、港まで行く人は終点で降りればいいので焦らないでいい。船の出発の5時間も前に行ったこともあり、終点まで行った人は3人だった。
終点のバスターミナルから約20分歩いて港に出る。まだチェックイン事務所が開いてなかったので道路向かいにあるSunrise Lines社事務所でチェックイン。切符をもらった。午後6時の出航までまだ時間がある。荷物を預かってもいいぞ、というのでその事務所にバックパックを置き、周辺を散策することに。
さすがにここまで来ると空気も澄み、イズミールの大気汚染とは無縁だ。天気もよく明るい。住宅やお店も真新しく、貧困は感じさせない。エーゲ海のリゾート街だ。
キオス島で乗り換え
ピレウス港を探索
朝暗いうち、6時頃、ピレウス港に着いた。アテネまでは地下鉄で1時間もしないで行ける。午後のホテル・チェックイン時間までは相当時間がある。やはり、時間が空いたらそこで観光、という路線だ。ピレウス港は、東欧諸国の自由市場圏内での発展が軌道に乗る中、拠点港、中継ぎ港として重要性を高めている。
ピレウスは地中海最大規模の港
ピレウスはまず、客船の港としてはヨーロッパ最大の規模を誇る。港を歩いても、巨大な客船が少なくとも十数隻は泊まっている。(Eurostatの統計を見ると、2021年の年間乗降客数は約600万人で3位になっているが、1位、2位はイタリア本土とシチリー島の狭い海峡を連絡する港(Messina, Reggio Calabria)なので実質的には1位だ。)
コンテナ貨物の取り扱いでは2021年に530万TEUで、ロッテルダム、アントワープ、ハンブルグ、バレンシアに次いでヨーロッパ内5位だった。2014年に8位だったのが徐々に順位を上げている。(世界全体では29位。世界トップは4700万TEUの上海。)
中国がピレウス港を買収
このピレウス港に目をつけたのが中国だ。2009年のギリシャ経済危機を契機に、国有企業である中国遠洋海運集団有限公司(COSCO, China Shipping Corporation Limited)がピレウス港買収を進め、現在、ピレウス港湾公社株式67%を保有するまでになった。一国、あるいはEUの基幹的インフラを外国企業に売り渡していいのかという議論が出ている。
中国は一帯一路政策のもと、ヨーロッパの他の港湾にも投資を進めているが、その中でもピレウス港は拠点的存在だ。ヨーロッパ主要部(北西部)に向かうにはコペルやトリエステなど、アドリア海北岸の港の方が有利だが、これまでの関係もあるし、東欧、黒海沿岸諸国へ中継ぎ港としても使えるギリシャ南部の港に価値を見出しているのかも知れない。