カリフォルニア山火事 ―街がけむたい

カリフォルニア各地で山火事が起こり、私の住むコンコードの街も、そこからの煙でけむい。

でも、最初はそうとは気づかなかった。10月27日(日)、かねてよりの計画、サンフランシスコ圏の東端、アンティオックやストックトンの街を走破しに行った。いやに風の強い日だった。寒冷前線が通過して寒くもなっている。ソノマ郡北部の標高1000メートル前後の山地帯ではハリケーン・レベルの風速164キロ/時に達したという(Flat Pine地域)。なるほど、自転車があおられる。何もこんな日に出かけなくてもよかったな、と思いながら、ディアブロ山の方を見ると、いつもはくっきり見える山がくすんでいた。空気が汚れている。「砂塵」の臭いもする。何カ月も雨が降らず大地が乾ききっている。この風じゃ砂ぼこりも立つな、と思いながらシルクロードの街々を思い出し、予定通り鉄道と自転車で2つの街を見学してきた。

ストックトンは意外と風も弱く、平和だった。

その帰りの電車(いや、AMTRAKサンヨッキンズ線のジーゼル車だったが)で、これが山火事の煙であることがわかった。サクラメント川とサンヨッキン川がサンフランシスコ湾に流れ込むあたり(スイサン湾と呼ばれる)で火事が発生しており、巨大な煙が立ちのぼっていた。アンティオックとマルティネスの中間地点の対岸(北岸)。地図で見ると、分岐河川にはさまれて一応中州になっているグリズリー島だ。山火事ではなくて平野が燃えている。が、「野火」というにはあまりに巨大な煙だ。山でも平野でも乾燥して枯草状態になっている。そしてこの風だ。一旦火が付けばまず止められない。燃える所がなくなるまで、あるいは道路や川で遮られるところまで燃えてしまう。北からの強風にあおられて、灰色の煙の壁は見事にコンコード方面に流れている。

スイサン湾対岸(北岸)の平野から巨大な煙が。27日午後5時頃、南岸西側からみたところ。

その煙はまっすぐコンコード方面へ。27日午後2時頃、南岸東側のアンティオックの街から見たところ。スイサン湾(サクラメント川、サンヨッキン川が合流してサンフランシスコ湾に注ぐ水域)も強風で波立っている。

列車を降りたマルティネス付近は煙からずれる。しかし、そこからコンコードまで南東方面に自転車をこいでいくと、次第に空が曇り、あの煙の下になってきた。そして「けむい」。何たるサイクリング日和りだ。マルティネスとコンコードを結ぶ幹線道路アルハンブラ通りの東側でも別の火災が発生していたようだ。車が通行止めになり、周囲の丘一帯が黒焦げになっていた。火もわずかに残っている。

コンコードにも近いアルハンブラ通りの東側にも山火事。周囲一帯の丘が黒焦げで、手前左には小さな火が残る。車通行禁止になっていたが、ほぼ消し止められた(燃えるところがなくなった?)からだろう、自転車は通してくれた。27日午後6時頃。

風速164キロ/時を記録したソノマ郡北部(サンフランシスコ北約100キロのキンケイド地域)では、27日現在、220平方キロが焼け18万人が避難した地図)。(住民人口18万人にあたる地域に避難命令が出たということだが、避難地区に残ると「逮捕」される。だれも残っていないないはずだが、1名が逮捕されたとの情報)。先週末にかけ、より高温になっていた南カリフォルニアでも大きな被害がでた。ニューサム州知事はカリフォルニア全土に緊急事態宣言を出した。

きょうのコンコードのように風下での煙害もある。送電線のショートで火災が発生するので、強風になると人為的に電気を停められる(停電)地域も多く出る。まだコンコードはそこまでになっていないが、電気が停まったらどうなるのか。冷蔵庫は? 冷凍庫内は解けて水が流れ出すのか? いや、それも大変だが、そのレベルの話じゃないだろうこれは。逃げなければならない人たちが大勢居る。昨年は州内全土で計8000カ所以上の山火事が発生し、消防士6人を含む103人が亡くなった