ウェブを見ていて、簡単にコロナ検査を受けられることを知って申し込んだ。日本では高嶺の花だが、こちらは無料で郡などがPCR検査を行っている。受けろ受けろと広報している。
検査を受けていいのか
本当に受けていいのか。日本では、軽々しく受けるべきものではないとブレインウォッシングされている。倫理的に言っていいのか自問。私は外国(日本)から帰ってきたばかりだ。感染しているかどうかチェックするのは理にかなっているだろう。日本でも外国から来た人には検査をしている。
カリフォルニア州は3月19日から屋内退避勧告を出したが、これを郡(county)ごとに徐々に解除していく上で、感染者数その他の基準を満たさなければならない(County Variance Attestation Form)。どれくらいPCR検査をやっているかもチェックされるので、郡政府としても積極的に広報し、検査数を増やさなければならない。郡がそういう状況なら、こちらも積極的に検査に協力してあげていい。
グーグルのコロナ検査もあるが
どうせ受けるなら、グーグル(系列のヘルステック企業ベリリー)がカリフォルニア州知事室と連携してやっている検査(Project Baseline)を受けたいと思ったが、どうもオークランドやサンフランシスコなど都心部まで行かなければだめなようだ。自転車では行けない。電車には乗りたくない。結局、隣町のウォルナットクリークで受けることにした。一般に検査は、州、郡、市が民間医療機関と協力してやっている。ウォルナットクリークでの検査は、州のプログラムだった。医療大手ユナイテッドヘルス傘下のLHIという医療機関が実施を受け持っている。
ウェブで簡単に予約できる
ウェブ上で簡単に予約できる(例えば、カリフォルニア州コントラコスタ郡のサイト)。名前、住所、そして医療関係者か、症状はあるか、感染者とコンタクトしたか、感染国に行ったか、などいろいろ質問に答えて、日時を選んでクリックする。だいたい1週間ほど先の予約になった。(詳しい手続き内容を知りたい人は実際にサインアップして試してみればいいだろう。最後の予約確認をしない限り、途中まで進める。予約をしてもキャンセルも簡単にできる)。こんな簡単に検査してもらえるなら、こっちに帰ってきてすぐに申し込めばよかった。私は共同住まいの身なので、国外から戻った私が早く陰性確認できれば、皆さんを安心させることができたはずだ。
広い講堂の真ん中に検査官が一人立っていた
カンカン照りの暑い日、隣町まで自転車をとばす(まあ、ここの夏は毎日カンカン照りだが)。検査場は小学校の講堂兼体育館のようなところだった。車でしか受けられないドライブスルー方式の検査場もあるが、ここは普通に歩いて行き建物内で検査してもらう。学校はすべてコロナ休校になっているし、そもそもアメリカの学校は6月半ばから夏休みになるから、児童は誰も居ない。
着くと、10人程度が間隔を空けて並んでいた。列に係の人が来て、IDカードの確認などをしていく。暑い中立ったまま随分待たされた(約40分)。まずこれで最初のスクリーニングをするのか(倒れたら病状ありと判断、とか?)。が、ここの夏は乾燥しており、日陰に居る限り苦痛ではない。風があれば、自転車こいできた汗も乾いて快適とも言える。
順番が来た。中に入ると、広い講堂の中に長身の女性看護師(つまり看護婦)が一人だけ立っている。隅の方に事務スペースがあってもう一人の人が何か事務作業をしている。手招きされ、完全武装した看護婦の方に。
「ハーイ、私はナースのだれそれ。」
へえ、こっちの検査官は自己紹介するのか。感心して、私も「ハーイ、私はAki」と返す。
立ったまま向き合うと、すぐ細長い棒を鼻の奥につっこまれた。ちょっと気持ち悪い。「すぐ終わりますよう、3-2-1」と言われ、確かにすぐ終わった。「もう行っていいです」。「え、これで終わり?」。「そうよ」。ものの1分もかからなかった。すぐ出口から出た。こんなに簡単なのになんで40分も待ったのだろう。
名前の確認のされ方
出てから、そういえば私は名前を確認されなかったぞ、と気づいた。おいおい、大丈夫か。と思ってやっと気付いた。看護婦が自己紹介したのにつられてこっちが名乗ったのが名前確認だったのだ。なるほど、鮮やか。しかし、私は自分の愛称を言っただけで正式な名前は言わなかった。でもアジア系の変な名前は私だけだったから、間違うことはなかったのか。
参考動画:サンタクララ郡(シリコンバレー地域)のコロナ検査の様子
(私の受けた検査場とはちょっと違う。野外だし、スタッフの数も多い。)
陽性だったらどうしよう
検査結果は2、3日後に来るはず。待ってる間、私はだんだん不安になってきた。もし陽性だったらどうしよう。体はすこぶる健康だが、症状なしでも感染していることがあると聞いた。陽性結果が出ても、どこかに隔離されるわけではない。ほとんどが自然治癒するから家で待機していなさい、となる。共同生活住まいでは、同居者の方々に迷惑をかける。かと言ってどこかのホテルに泊まるのか?泊まれるのか? 日本に帰るのはさらに無理だろう。万一飛行機に乗れたとしても、名古屋の空港に着いたら家まで50キロ歩くのか。車の運転はできない。体力に自信はあるが、湾内埋立地空港からの橋がそもそも歩行者禁止だ。成田などに着いたらそれこそアウトだ。(日本への入国者は国籍や感染の有無を問わず14日間の自宅、ホテルなどへの自主隔離が求められる。そこまでタクシーを含め公共交通機関を使うこともできない。)
結果が出るまで11日かかった
しかし、そんな不安がどこかに飛んでいくくらい、結果連絡がなかなか来なかった。毎日ネットをチェックしても「結果を処理中」と出る。5日たっても来ないので、問い合わせ番号に電話。「検査が多いため、2、3日から時には5日かかります」という案内が流れて切れる。確かに報道でも、5日かかる場合もある、とのいう記事をよく見る。が、5日を過ぎても音沙汰がない。他にかけられる電話番号もなく、手詰まりになった。
体はまったく健康なので、検査が多くて混乱しているなら、せかすべきではないのだろう。独立記念日(7月4日)の休日が入ったから遅れているのか。症状もなく、医療関係者でもなく、会社に行く予定もないなどと回答していたで、優先順位を下げられたか。外国から帰ったばかりだということでは優先順位を上げてくれないのか。しかし、質問にそういう項目はなかったかも知れない。過去14日間に中国、イラン、韓国、ヨーロッパ諸国に行ったか、という質問はあった。ソウル経由便だったので、韓国にチェックを入れたが、現在の韓国は、アメリカなどに比べてはるかに安全だろう。
10日たって、これはこのまま来ないのかも知れないと思い出した。年金にしても健康保険にしても、こちらの事務手続きでは初歩的な間違いが多く、直してもらうにも結構時間がかった。こんなものなのだろう、とあきらめかけた11日目、連絡がきた。「アカウントを見よ」のメール指示でネットを見ると「ネガティブ(陰性)」の回答。「結果にかかわらず、次のような注意を」ということで、手を洗う、消毒をするなどなどの注意事項が書いてあった。(なぜかマスクをかけよという指示はない。)
ようやく前に進める。しかし、結果通知に10日以上かかるのでは、感染していても結果が出るまでには回復、感染してなくても結果がでるまでには感染、ということにもなりかねない。積極的に検査する姿勢はいいが、無理はないか。報道を見ても、「結果が出ないの独立記念日の親戚行事がふいになった」「医療スタッフに仕事についてもらうにも検査結果出ないので10日待たされた」「8月に学校がはじまっても、検査結果待ちの児童が来るようなクラスに子どもを送り出せない」など、いろいろ嘆きの声が聞かれる。大リーグのサンフランシスコ・ジャイアンツも検査結果通知の遅れで6日からの練習を延期。アリゾナ州だが、27日待たされた例もあったという(Arizona Republic, July 6, 2020)。最も重大なのは、感染していても何日も結果がわからず多様な接触行動が行われてしまうことだ。感染追跡調査が難しくなる。
日米のコロナ検査数、感染者数、死者数(7月6-7日現在)
- 日本は7月6日現在、アメリカは7月7日現在。人口はともに2018年推計。
- 資料:厚労省「各都道府県の検査陽性者の状況」、2020年7月6日; COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU), July 7, 2020; Contra Costa Health Services home page; 総務省統計局の人口推計; U.S. Census Bureau, American Community Survey