ナミビア首都ウィントフックで黄熱病予防接種、マラリア予防薬入手、携帯加入、サン族地域行き調べ

ナミビアの首都ウィントフック・遠望。

ウィントフックのコンビニ店員

あなたは近くのコンビニに行って、例えば牛乳を買ったとき、店員から、
「私にも何かドリンク買ってくれないかな?」
と言われることはあるだろうか。

ないよね。だが、ナミビア首都ウィントフックに着いて最初に買い物したとき、店員にそう言われて驚いた。宿近くのコンビニ。バックパッカー向け安宿とはいえ、まわりはナミビア理工大学など複数の大学が集中する文教地区だ。南アでも街で食べ物を乞われることはあったが、そのティーエージャーらしき女性店員は、決して飢えた風でなく、育ちのよい中産階級の少女と見えただけに、なお愕然とした。10回言えば1回くらい本当にドリンクをおごってくれる客がいるかも知れない。しかし、それを言うことでどれだけ自分の尊厳を落としているかわからないのか。

しかし、その後も街でねだられることは続いた。本当に飢えた人も居るだろうが、そうでなさそうな人からも。これからのアフリカの旅が思いやられる、と最初は思ったが、意外とこちらの人には別の感覚があるのかも知れない。10回に1回本当に何かもらえるならやってみる価値あり、か。「もうかりまっか」と日々挨拶するような気楽さなのかも知れない。

「旅の仕事」に集中

さてこのウィントフックでは「旅の仕事」に集中した。これからの厳しい旅に備えてその土台づくり。黄熱病の予防注射を打ち、マラリアの予防薬を手に入れ、スマホ通信に加入し、遠隔のコイサン族居留地に何とかたどり着く方途を探る。

黄熱病の予防接種

黄熱病の予防接種は保健所のようなところ(国立美術館向かいのRobert Mugabe Clinic)で90Nドル(800円)でできた。窓口でお金を払ってから7、8人といっしょに数十分待ち、診察室に入って肩あたりにチクリだけの注射。その後行ったマラリア薬関係の医師もそうだったが、この国では女医が多いようだ。良いことだ。この保健所の女医は、私が日本から来たと知ると「行きたい」「連れて行ってくれ」と冗談をたたいた。

マラリア予防薬

ナミビア北部以北からマラリア危険地帯がはじまるという。世界で年間60万人が亡くなる危険な感染症だ(うち96%がアフリカ)。かからないため、危険地域に居る間(と若干のその前後)毎日飲み続ける予防薬がある。薬局で自由には買えず、まず医者の診察を受けなければならない。街の中心部にあった医院を適当に選んで入った。

やはり女医で、早口でいろいろ聞かれ聴診、血圧その他診察を受け、3カ月の旅用にマラロン配合剤90錠を処方された(MalaTeq, Atovaquone 250mg /Proguanil 100mg)。診察料500Nドル(4300円)。

待合室のテレビにはきれいな桜の花の映像が映っていた。よく見たら日本の風景だった。

処方箋をもって近くの薬局に行くよう指示されたが、そこにはなかった。郊外のモールの大きめの薬局に行くよう言われた。そこにも3カ月分はなかったので、取り寄せてもらうことに。ウィントフックはまだ危険地域外なのであまり置いてないらしい。

マラリア予防薬3か月分の値段は4351.5Nドル(3万7000円)と高い。日本だとこの2倍程度なのでまだいいのだが、貧乏旅行者には厳しい出費。しかし、これはけちれない出費だ。

こんなに高くてはアフリカの庶民には手が出ないのでは、とも思った。しかし、365日感染地帯に暮らす住民が365日飲み続けるわけにもいかないだろう。かかってからの治療のためだけに使うのか。

携帯通信SIMカードの購入

次いで、ナミビアで使える携帯通信SIMカードの購入。南アではSIMカードは購入しなかったが、ナミビアではこれが必須と判断した。街にもWifiがあまりないし、コイサン族に会いに砂漠の遠隔地にも行く。

ナミビアの携帯通信はTelecom NamibiaとMTCの二社。圧倒的に後者の方がつながりやすいという情報を得たので、MTCを求める。普通のお店でも買えるのだろうが、街中心部にMTC直轄営業所のようなところがあったのでそこで手続き。期間や通信容量でいろいろ種類がある。私はデータ通信重視のAweh YoData 30を購入した。ウェブ上には249Nドルとあるが、消費税15%と初期費用込みで計296.99Nドル(2500円)。1ヶ月に通話501秒、SNS50通、データ25GMまで無料だ。

テザリングにiTunes導入が必要

設定してもらい、その場で使えるかどうか確認した方がいい。通話はすぐできたが、データ通信ができない。「APN設定が変わっていなかった」とかで再設定してくれて、インターネットも使えるようになった。ただ、テザリング(スマホ通信を通じPCでネット利用)は宿に帰ってから試す他なかったが、どうもこれができない。息子からもらったiPhoneのお古を持ってきたのだが、Personal Hotspot(日本語iPhoneなら「インターネット共有」)設定はできるので、通信会社がテザリング不可にしているわけではない。

2日間、悪戦苦闘させられた末、やっと、このウェブページにたどり着いて原因がわかった。普通の説明にはあまり載ってないが、iPhoneの場合、PC側にアップル社のiTunesアプリが動いていないとだめらしい。iTunesと一緒にインストールされるapple mobile device supportというプログラムが必須なのだという。「iPhoneっていろいろ面倒なんですね」という感想も載っていたが、同感。私の旅先での貴重な2日間を返してよ、と叫びたかった。テザリングやるのにPC側に、直接関係ないと思われるアップル社製の音楽プレイヤー・ソフトを導入しなければならない、ってどうなのか。いや、熱烈アップル派の友人の方々から手ひどくやり込められそうなので、単に素人としてそう思っただけ、ということでご勘弁を。

「サン族の首都」

コイサン族に関心をもってナミビアに来たからには、「サン族の首都」と言われるツムクェ(Tsumkwe)に行かないわけにはいかない。これ一択だろう。ナミビア北東のカラハリ砂漠の中に、辛うじてサン族が伝統的生活を保障されながら、ある程度の自治を行なうところがある。オチョソンデュパ(Otjozondjupa)地方のツムクェ地区(Constituency、選挙区)だ。人口9000人で、うちサン族は2400人。そのツムクェ地区の区都が人口500人のツムクェの街だ。小学校、中学校もあり、小さいながらお店、飲み屋、宿などもある。サン族をロマンチックな太古の狩猟採集民とだけ夢想していると真実に迫れない。ある程度の近代生活になじみ、その中で貧困その他現代的問題にも直面する人々として理解しなければならない。

(以後、できるだけ「コイサン」でなく「サン」を使うことにする。部外者が勝手にコイコイ族(ホッテントット)とサン族(ブッシュマン)をくっつけただけで、彼らの間には「コイサン」という意識はあまりない。ナミビア北東部からボツワナにかけては主にサン族の本拠だ。)

どうやって行くか

だが、再び、問題はどうやって行くかだ。首都ウィントフックからは計750キロ。車があっても行くのは難しいようだ。途中で砂利道になる。4輪駆動が望ましいという。ガソリンスタンドもあまりないからタンクでもガソリンを持っていけと書いてある。ウィントフックの北450キロ、グルートフォンテイン(Grootfontein)までは、主要国道B8号線が通るので大丈夫だ。そこから300キロ、ちょっと先でR33号線に入り、サバンナ走行になってからが大変らしい。もちろんバスも鉄道もミニバスも乗り合いタクシーも行っていない。飛行機もないし、自転車は問題外。

ウィントフック中心部に観光案内所があったので、行き方を聞いた。ベテランの係員は、とても難しいと頭をひねり、車をチャーターするほかないだろうと言った。近くの観光業者をわざわざ呼んでくれた。しかし、片道8000Nドル(7万円)という。とてもじゃないが、私には無理だ。

「有料ヒッチハイク」という手

グルートフォンテインまではバスがあるので、そこまで行き、その先はヒッチハイクかライドシェアを探す他ないだろうと判断した。いろいろ勉強して、ナミビアでは「カネを払うヒッチハイク」、つまり路上でヒッチハイクのように車を停めて、臨機応変にライドシェアにする交通形態が普及しているという。ドライバーも慣れたもので、どうせその目的地に行くのなら、副収入のため客を拾っているらしい。街はずれのガソリンスタンドなどに、車を拾うため乗客が集まっている場所があるという。ナミビアだけのものではないが、Hitch Wikiなどという都市別ヒッチハイク情報のサイトがあるのも初めて知った。

先進諸国ではヒッチハイクは危険なのであまりやらなくなっている。しかし、途上国では有料ヒッチハイクくらいしか手段がないところもある。困難なルートを何とか行こうとする車にみんなが群らがる。ちなみにナミビアは、モンゴルに次いで世界で2番目に人口密度が低い国だ(3.1人/km2)。日本の2.5倍の土地に京都府の人口(250万人)が住んでいる。

ウィントフックの街紹介

ウィントフックの中心にあるオープン・モール、ポスト通り。地元お土産屋さんも屋台を出す。観光案内所もこの左手に。街のシンボル的なモールだが、接続して巨大なアメリカ式ショッピングモール(Wernhil Mall)ができたので、勢いをそがれているようだ。
その先、出たところにインデペンダンス通りがある。街の目抜き通り。こんなサン族民芸品のお店もあった。
さらにその先、ロバート・ムガベ通りには官庁、博物館、教会などが立ち並ぶ。古色豊かなクリストス教会は、20世紀初頭に建てられたドイツ系のルーテル教会。ナミビアはかつてドイツの植民地だった。右手に独立記念博物館が見える。
独立記念博物館。解放闘争の歴史などが展示してある。北朝鮮の企業が国際協力で建設した「社会主義リアリズム」建築とのこと。正面の銅像は、ナミビア解放運動の指導者にして初代大統領サム・ヌジョマ。
銅像はウィントフックの街を見下ろしている。
中は、さすがに北朝鮮的な「社会主義リアリズム」で、ちょっと…。
市の博物館。小さな博物館で、市の歴史、文化が展示してある。建物はドイツ統治時代の歴史的建造物だが、博物館は2020年11月にオープンしたばかり。
市博物館の中。なお、上記独立記念博物館を含めて、この一角にあるすべての博物館は入場無料だ。
かつてドイツの要塞だったアルテ・フェステ 。現在は国立博物館に使われているそうだが、修理中で閉まっていた。1892年築造のウィントフックで最も古い建築物。
議会議事堂の入り口。
国立美術館(アートギャラリー)。ムガベ通りに並ぶ一連の博物館、官庁群の一番最後に位置する(ムガベ通りの終端)。 
そこから近いウィントフック中央駅。鉄道が運行しているかわからないくらい寂しい駅だった。