あなたは自転車に乗っていて涙が出ることはないか。秋、家々の木々が色づき、澄み切った青い空に映える。乾燥したすがすがしい風が肌をなぜ、あなたはその風光の中をペダルをこいで進む。
日本なら、赤い柿の実がなり、稲刈りの済んだ田んぼに、わら干しの垣根や「わらぼっち」ができているかも知れない。里山はもちろん黄色や赤に色づいて、赤とんぼも飛んでいるか。ここコンコード(カリフォルニア)も同じだ。田んぼはないが、街路樹や家々の前庭の木々が色づき、夏から枯れたままの草原の山や、真っ青な空がまぶしい。
車に乗っていたら感じないだろう。歩いているだけでも感じないかもしれない。この色彩に満ち澄んだ空間をペダルをこいで進む感覚。一年で最もサイクリングが気持ちよくなる季節。歳だが、少年の気持に戻る。こんな世界には本当に長く居たい。そう思って涙が出てくる。