バークレーヒルズ越え サイクリング

土曜テニス会の帰り。きょう6月19日は、バークレー・ヒルズの自転車山越えを試みる。前に自宅のあるコンコードからオリンダまでは来たが、その先ちょっと高いバークレー・ヒルズを越えて湾東地区のオークランドやバークレーに行ったことはない。地図の上だけで見れば、ここを越えてベイブリッジ方面に出るのが、サンフランシスコに行く最短ルートになる(ベイブリッジ西半分はバスになるが)。しかし、北のサンラファエル・リッチモンド橋経由より高い標高を走破することになるので相当きついと行く前からわかっていた。高速道路はこの山の部分トンネルになっている。

しかし、一度は経験しておかねば、と逆方向からこの山越えを試すわけだ。社会勉強ツアーでなくひたすら肉体勝負になること覚悟で、エリセリートのテニス会場を1時半ごろ出る。

 

いきなりブラックライブズ・マターの行進と合流

ところが、BART高架線下のオローニ緑道のサイクリング路に出たとたん、不思議な自転車集団に合流した。自転車の渋滞か? いや、ここはそんなに混むサイクリングロードではない。黒人青年が多い。Tシャツに「Black Lives Matter」(BLM)と書いてある。そうか、差別反対の示威行進自転車ライドだな、とわかった。「何だねこれは?」と最後尾を守るオーガナイザーの一人らしい若者に聞くと、笑顔でワッペンを手渡してくれた。「Rich City Ride」のロゴが入っている。なるほど、北のリッチモンド市(黒人の多い街)からバークレー、オークランド方向に自転車ライドの示威行動をしているらしい。6月19日は、つい2日前に大統領署名を得て新しい国民の祝日になった「ジューンティース・デー」だ(「黒人独立日」、「解放の日」とも)。南北戦争後の1865年6月19日、北軍がテキサスに進駐して最後まで残っていたこの地の奴隷制を撤廃させた。すでに2年前にリンカーンの奴隷解放令は出ていたが、この日に実質的な全土的廃棄が完了した。
地図:OpenStreetMap, (CC BY-SA 2.0)
まったくの偶然だ。テニスを終えて自転車道に出たとたんに、このライド集団といっしょになったのだ。何かのめぐりあわせだろう。参加してついていく他ない。
バークレー近辺はリベラルな街だ。道行く人やすれちがう自転車も手を上げて声援を送り、車道の車はクラクションを鳴らし気勢をあげてくれる。珍しいアジア系じいちゃん参加者の私にも声援を送ってくれて申し訳なかった。自転車ライド自体は、先頭に大きなスピーカーがあって音楽を流しているものの、交通規則を守り、旗竿を立てることもなく、特にシュプレヒコールを叫ぶこともなく、ライダーたちの静かな行進だった。
バークレーのストロベリークリーク公園まで来ると、バスケコートに入り、そこで休憩になった。計100人くらいいるだろうか。真ん中のスピーカーのところで、オーガナイザーが「ここで15分休みます」と案内している。黒人の他白人が約2割居る。アジア系は私だけだ。黒人とアジア系の連携はまだあまり進んでないのかも知れない。
私もここで弁当を食べ、そして彼らの向かうオークランドとはやや別方向に自転車を走らせはじめた。
カリフォルニア大学キャンパスの南側、学生街のテレグラフ通り。以前よりも人通りが増えている。

クレアモントから山登り

湾側からのバークレーヒルズ越えには、まずこのクレアモント・ホテルを目指せばいいだろう。遠くからでも見える立派な白亜のホテルだ。丘の麓に堂々と立つ。1915年築で、2003年に国家歴史登録財にも指定されることになったが、オーナーの反対で取りやめになった。保全上各種制限が出ることを嫌ったらしい。
この周辺(バークレー市とオークランド市の境界付近に位置する「クレアモント地区」)は、今でこそかなり都市化したが、もともとベイエリア都市圏から離れた閑静な自然地域で、広い庭を持つ豪邸が散在していた。
クレアモント・ホテルの横をクレアモント・アベニューが通っている。バークレー・ヒルズを超えるにはこの道を登っていく。(この辺のイーストベイ山地は一般にバークレーヒルズと呼ばれているが、細かく言うとこのクレアモント地区の背後付近はクレアモント・ヒルズという)。思った通りの急峻な坂が続き、途中から自転車を降り、押して登る他なくなった。
山の中の十字路サミット・パスに出た。左手クレアモント・アベニューから登ってきたのだが、真っすぐ右手に降りて行くと、道路名がフィッシュ・ランチ道路に変わり、高速道路トンネルの出口付近に出られる。横切っている通りはグリズリー・ピーク通り。最初、フィッシュ・ランチ道路を降りて行き、結局、高速道路にしか出られずここに戻り消耗。次いで写真のグリズリー・ピーク通りを行く(登る)という正しいルートに入った。
十字路には飲料や果物の屋台が出ていた。皆汗だくでここまで登ってきたと思われ、繁盛している。私はスポーツドリンクをたくさ持ってきたのでお世話にならず。
この付近はすでに標高400m程度になっている。山地の向こう側、かなたにディアブロ山なども見える。前述の通り、まずここから急な坂を下り、高速道路トンネル出口へ。

自転車は高速道路を通れない

バークレーヒルズを超える州高速24号線カルデコット・トンネルのオリンダ側出口。グーグルの自転車ルート検索では、(起点・終点の設定によっては)これに沿っても自転車でオリンダの方に出られるようになっているが…。(昔の地図でもここに自転車ルート・マークがついている。)
だめだ、アクセス路を行くとマジ高速道路本体に出てしまう。狭い渓谷を通る高速で、自転車が通れそうな側道はない。また急坂を上ってさっきの十字路まで戻る以外ない。かなりの消耗となった。(しかし、ここは通れない、と確認できただけでも有益だったのだ。人生、すべてそのように前向きに考えよう。)
尾根の十字路からさらに山道を登る。西側、サンフランシスコ湾方面は濃い霧に覆われている。サンフランシスコ中心部の高層ビル、セイルフォース・タワー(326m)だけが霧の上に顔を出している。
観光用の蒸気機関車鉄道(Tilden Steam Train)の発着所がある付近で右折し、オリンダ方面に降りていく道路、ローマズ・カンタダズに入る。写真のこの辺が今回のルートで最も標高が高い。550m程度。東方向、ディアブロ山方面を望む。手前にオリンダの郊外山腹の住宅街も見える。
ここまで登ってくるのは相当きつく、いくら地図上では最短距離に見えても、自転車ルートとしては使えない、ということを改めて確認。わかっていたけれど、実際に確認することは意味があるのだ。
山地の東側に行くにつれ、ディアブロ山がよく見えてくる。道路は益々急な下りに。
やがてエル・トヨナルという道路に入る。まだ山中だが、結構住宅も増えた。車社会のアメリカでは山の上に住む人も多い。この写真のお家では、入口のところに一般人も入れる展望台をつくっている。おかげでいい景色が見られた。見えている湖はブリオネス貯水池。前にあの周辺をサイクリングしている
オリンダの街(人口2万)、そしてBARTのオリンダ駅(写真)に着いた。
BARtオリンダ駅のホーム。この辺のBART路線は高速道路(州道24号)と並行している。おお、かわいそうな自動車族たちよ。こうして快適なサイクリングで山を越えて来ることもできるのだよ。(向こうこそこっちをかわいそうと思っている?)